今回はワーキングプアについてお話したいと思います。
ワーキングプアとは
「ワーキングプア」とは、「正社員と同等、もしくは正社員としてフルタイムで働いているにもかかわらず、貧困から抜け出せない労働者」を意味する言葉です。英語の「Working poor」をカタカナ化した言葉で、日本語では「働く貧困層」などと訳されます。「ワープア」と略して呼ばれることもあります。
総務省統計局が発表した2019年の「労働力調査」(詳細集計)によると、役員を除いた雇用者5596万人のうち、非正規の職員・従業員は2120万人となっています。これは、全体の37%にあたる数字です。
一方、年間収入別で見てみると、2018年に200万円に届かなかった人の数は、正規・非正規合わせて1873万人となっています。割合にすると、総数5660万人中33%ほどの人が、ワーキングプア層にあたることになります。
ワーキングプアの原因
経済的・社会的な問題
国内経済は、長年厳しい状況が続いており、国民1人当たりの名目所得も停滞する傾向にあります。このため、正社員の立場であっても給料が上がらず、非正規雇用であれば、なおさら低賃金のまま据え置かれるという状況が常態化しています。
また、高度な教育を受けた人材を受け入れる場がない、母子家庭で貧困から抜け出す隙がないなどの状況も、ワーキングプアの発生を助長する一因となっています。
デフレで賃金水準が低下した
1990年代の頭にバブル経済が崩壊して以降、日本経済は一気にデフレ(物価が持続的に下落する現象)が進行しました。これは労働者の賃金水準にも影響を及ぼし、正規雇用者ですらなかなか給料が上がらないという状況が一般化します。その結果、正社員であってもワーキングプアに陥ってしまう層が続出しました。
対策、ベーシックインカム
「ベーシックインカム」とは、政府が全ての国民に対し、毎月生活するのに最低限必要な現金を支給するという制度のことです。生活保護などとは違い、審査や請求の必要がないため、この制度を導入することで、ワーキングプアの状況にある人も経済的に自立しやすくなると考えられています。
ただし、この「ベーシックインカム」は、いまだに理論の段階でしかありません。試験的な導入は、いくつかの国や地域で行われており、一定の成果を挙げた例もありますが、いずれも全面的な導入には至っていない状況です。
経済的な援助
ワーキングプアの状況にある人は、多くが健康面に問題がなく、フルタイムで働けるコンディションにあります。にもかかわらず、貧困に陥るという状況は、社会の福祉機能が正常でないという見方が可能です。
本来労働者のセーフティーネットとして、「最低賃金」が各都道府県で定められていますが、現在の制度は十分とは言えません。同様のセーフティーネットとして「生活保護」も挙げられますが、こちらも財政難などの事情から、十分機能しているとは言い難い状況にあります。
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