今回フードテックについて話したいと思います。
フードテックとは?
「フードテック(FoodTech)とは、「Food」と「Technology」の2語の組み合わせから成る造語です。「Food」は周知の通り「食料」ですが、この場合の「Technology」は、「ITなどの先端技術」を意味しています。簡単に言えば、「フードテック=先端技術を用いて食の可能性を広げていくこと」であり、フードテックの活用により、従来にはない食品の開発や、調理法の発見が可能になるとされています。
例えば、植物性たんぱく質の代替肉を製造したり、工場で野菜を作れるようにすることなどが、フードテックにあたります。
近年は、急激な気候変動や貧困といった要因による食糧不足などの問題が危惧されていますが、フードテックはこれら問題の解決につながるとして、世界中で大きな注目を集めています。日本においても、農業従事者の減少などの課題解決に取り組むフードテック企業が増えつつあります。
フードテックで解決できる問題
フードテックが解決に役立つと期待されている問題が、上で述べたような「食糧不足」です。食糧不足の原因は1つではなく、さまざまな要因が絡みあって起こっていますが、大きなものでは「自然災害」や「貧困」が挙げられます。特に気候変動による干ばつは、現在の世界の食糧生産に大きなダメージを与えています。また人口増加もこの問題に拍車をかけており、このままだと将来的に食糧不足がより深刻化すると見られていることから、早急な対策の必要性が叫ばれています。
生産者の減少
日本における食の問題として最も大きなものの1つに、「人口減少による生産者不足」がありますが、フードテックはこの解決にも役立つと期待されています。実際に、現在の日本では農業や漁業などの第一次産業従事者が減っているほか、食品製造業や外食産業の分野でも、労働力の不足が深刻化しています。この問題の解決には、食料の生産効率向上などが必須になりますが、IoTやロボット技術などのフードテックはその実現に寄与できます。
飢餓
フードテックによる解決が期待される分野に、「飢餓問題」があります。飢餓とは慢性的な栄養不足の状態に陥ることですが、現在(2019年)世界で飢餓状態にある人の数は、6億9,000万人にのぼっています。これはその5年前と比べると、6,000人近く増えた数字で、今後も増加が続くと見られています。フードテックでは、食材を長期保存する技術の開発なども行われており、これによって飢餓問題への解決を図ろうとする動きが活発化しています。
フードロス
飢餓と同時に世界的な問題となっているのが、「フードロス(食品ロス)」です。これは「食べられるうちに廃棄される食料」のことで、過剰生産や外観品質基準などが原因で起こります。日本は世界でも有数のフードロス大国として知られており、年間で約2,500万トン発生する食料廃棄物のうち、600万トンほどがまだ食べられる食料にあたります(平成30年度)。フードテックは、食品の無駄な生産や廃棄を無くしてフードロス削減に役立つと期待されています。
菜食主義者(ベジタリアン、ビーガン)に向けた代替品
世界には、肉や魚を好んで食べる人たちがいる一方で、菜食主義を貫く人たちも大勢います。こうした人々の動機は、宗教上の理由や動物愛護、体質の問題とさまざまですが、近年は環境保護や健康上の理由から、ベジタリアンやヴィーガン(完全菜食主義者)になる人も増えています。こうした人々は、肉や魚を口にしないとはいえ、体のためにはたんぱく質は欠かせません。そこで代替肉(植物性たんぱく質で作られたもの)を製造するフードテックが注目を集めています。
食の安全
食の安全に対する社会的関心は、非常に高くなっています。現在は食品に関する衛生基準が定まっているとはいえ、食中毒などの問題は、あちこちで頻繁に発生しています。傷んだ食品や異物が混じった食材を食べるリスクを避け、食の安全性を確保することが重要な課題ですが、これについてもフードテックによる解決が期待できます。食材を長期保存できるパッケージや、異物の混入を防ぐ仕組みなどの開発が、最新テクノロジーを駆使することで可能になります。
フードテックの事例一覧
- 調理
ものを食べるには、食材を切ったり焼いたりする調理の過程が欠かせませんが、この分野においてもフードテックの導入が進んでいます。調理分野におけるフードテックでは、身近な家電の例だと、スマートフォンと連携させたオーブン(レシピ検索などが可能)などがあります。さらに、ロボット技術を用いて自動で調理を行う機器なども、続々と登場しています。また、分子レベルで調理自体を分析・研究する「分子ガストロノミー」なども、フードテックでは進められています。
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